ためらう理由
私のところには、毎年数多くの相談が寄せられます。その中で、特に受験を始めて間もない保護者から寄せられるご相談が、このような親が子供の受験勉強に介入して良いかどうかという相談です。
中学受験生を持つ保護者の中には、本当は自分も子供の勉強を見たほうが良いのではないかと思いつつも、積極的に介入することにためらいを持つ方が少なくありません。その理由としてよくお話しいただくのが、一部の塾ではあるのですが、塾からの指示という理由です。
- 「勉強は我々が見ますから親は何もしなくて結構です」と 説明会などで再三言われた。
- 「子どもの勉強は見ないでください」と塾から釘を刺された。
という方が多く見受けられます。
この問題は根本的な問題であるのと同時に、悩んでいる方は深刻に悩まれているので、長い説明になります。結論だけ知りたい方は、スクロールしてください。
親は子供の勉強から離れるべきとする理由
昔から、親に対して「勉強は我々が見ますから親は何もしなくて結構です」などと言う塾はありました。最近は「子どもの勉強は見ないでください」と、とにかく親を子どもの勉強から離させようとする塾もあるようです。
その理由として、よく取り上げられるのが、親が教えると子供が親を頼り、自分で勉強しなくなるとか、親の教え方は塾とは違うので子供が混同するという理由です。
本当に子供の勉強を見てはいけないのか
これをどのように考えたら良いのでしょうか?本当に親はこの指示に従うべきなのでしょうか?なるほど、たしかに一見最もらしい理由です。
もちろん塾側なりにそう感じたんでしょうが、私には詭弁のように感じてなりません。もし「親は何もしなくてもよい」ということを主張するなら、親が子供の勉強に無関心であれば子供は自分で勉強するのでしょうか?塾に行っても勉強がわからなくなりついていけなくなる生徒は無数にいます。こういう生徒は勉強がわからないのですから、自分で勉強するはずがないのではないでしょうか。
またもし「親は子どもの勉強を見るな」と主張するなら、親でもわかる教材を与えれば済むことではないでしょうか。そういう努力もなく、親に勉強を見るなという主張が通るのであれば、勉強がわからないという状況に陥った生徒に対して塾は全面的に責任を負わなくてはいけないのではないでしょうか。
受験に失敗してもなんの責任を負わない塾が、親に対してそこまで要請するのは、自分の立場をわきまえてないように思えます。親が勉強して教えるのが理想的ですが、多少やりかたが違っても何もしないで放置するよりはいいのではないかと私は思います。
勉強を見るなとする2つの思惑
一部の塾で親を子供の勉強から離そうとする、最も大きな理由は塾経営上の都合のように考えられます。それはどういうことかというと、少し具体的にいえば2つの思惑が考えられます。
1つ目は、「本来のお客様である親に対する受けをよくする」。そう言うことによって「めんどう見の良い塾だ」という評価を得られるのではないかと、考えているのではないかと思えるのです。親に気に入ってもらえれば、塾をやめることは少ないと考えられるからです。親はラクできますので、歓迎するところでしょう。
2つ目は、「苦情の回避」。逆に親が中学受験の知識を深めると、指導の至らない点などが明らかになってしまい自分たちへの批判につながるため、それを避けようとしているのではないか、という思惑です。
私の考え
それを真に受けて、あえて親が子どもの受験勉強に目を背けるのは受験上不利にしか働きません。私は、親は積極的に子供の受験に介入すべきだと考えます。勉強を教えられるのであれば、教えたほうが良いと考えます。
子供にとって本格的な受験勉強をするのは、おそらく初めてのはずです。勉強とはなんなのか、実質的なことは何も知らないのです。将来ある子供に、親が今自分の経験を活かさないで、どうするのでしょう。
実は塾の中には前述の指示とは逆に、親に「なるべく勉強を見てください」と指示する塾もあるのです。で、どちらが実績を上げているかというと、断然こちらの塾なのです。
実際私が家庭教師に伺わせていただくご家庭も、算数など保護者が熱心に教えていらっしゃるのをお見受けします。
どうやら上位クラスの生徒の家庭であるほど、親が熱心に教えたり、家庭教師をつけていたりするようです。
もちろん6年生で扱う算数の難問をわかりやすく教えるのは難しいことでしょう。
しかし4年生や5年生前半のまだ基本的な学習内容であれば理解の手助けができるのではないでしょうか。この時期つまずいてしまうと、そのあと相当影響が出ますので、特に見てあげるべきだろうと私は思います。
それだけでもだいぶ違います。
思いがけない副産物もある
また、親が子どもの受験に係わってプラスになる側面は他にもたくさんあります。
例えば受験を理解することによって、親子間の相互理解や信頼感が高まります。親子の関係が良くなったりするのです。
いまお子様はこれまでにない巨大な敵に立ち向かっているのです。
孤独で戦うのと、そばに強力な応援団(助手)がいるのとでは、どちらが有利か、 自明ではないでしょうか。