全体的に見て、テキストがうまくできているなと思うのは、四谷大塚の予習シリーズである。
日能研の算数の教材も基礎共通レベルに関しては、すごくいいと思う。

四谷大塚のシステムはいい。
よくできたテキストで勉強し、週末にはそれをチェックするテストがある。うまく使えば、本来ならもっと成果が出そうな気がする。応用問題にもう少し工夫を入れれば、結果も大分変わってくるだろう。

日能研もカリテ(カリキュラムテスト)といわれる週例テスト制だが、日々のカリキュラムが少々過剰サービスというか、もうちょっと拘束時間を少なくした方が成功するような気がする。
とはいうものの、四谷以外も各社それなりによくできていて感心させられる。
教材をうまく使いこなせれば、『どこの塾に行っても筑駒・桜蔭に合格できる』と太鼓判を押せるほどだ。
そううまくいかないのは、使い方に問題があるといえる。
四大塾を研究してみて一番違いを感じる教科は、算数である。どこも「算数を制するものは中学受験を制す」といわんばかりにこの算数という教科に力を入れる。

逆をいえば、算数以外の国語・理科・社会については、教材の違いは多少違うものの、それによって大きな有利不利を感じない。

『塾の違いは算数の違い』といっても過言ではないように思われる。算数について問題の編集は各社各様だ。だが私なりの見方で分類してみようかと思う。

4社の教材を比較してみると、選択編集する問題に大分特色があるのだ。

問題には、俗に『クセのない問題』というのと、『クセのある問題』というのがある。
一回読むだけで何を言っているか容易に理解できる、純朴な何も飾りがない問題と、問題文を読んでみて、なんとなく通りが悪いというか、なにかちょっとひと癖あるような、そんな感じがする問題だ。

クセのない問題は、学ぶ方からみれば非常に学びやすい。
クセのある問題は、入試問題に近い。
という利点がある。

クセのない問題の典型は、四谷大塚の予習シリーズ、日能研の基礎から共通までの問題、ワセアカではwベーシック、サピックスでいえば基礎トレーニングがそれにあたるだろう。
クセのある問題は、サピックスのデイリーサポート(デイリーサピックス)、日能研の応用問題、四谷大塚では応用問題集、ワセアカもプリント類の一部にいれている。

どこの塾も当然両問題とも取り扱うが、力の入れ方は違う。

クセのない問題重視は、やはり四谷大塚だ。
四谷大塚は『自学自習』を基本理念とするだけに、このような問題が中心になるのは当然だ。インプットはしやすいように思える。
比較的解きやすいから、解いていて楽しいかもしれない。算数入門者にはうってつけだ。

その対極にあるのはサピックスだ。
クセのない問題というのは、主に基礎トレーニングに入れられているが、ほとんど授業では取り上げない(特に6年生では)。もっぱら授業では他社と比べればクセのある問題が取り扱われる。

サピックスが上位校に強いのは、ひとつはここにあるのではないかと考える。クセのある問題に慣れていると過去問に対応しやすいのである。

実際に出題される入試問題は、サピックスの問題とはクセが異なるかもしれない。だがクセがあるというだけで、過去問対応力は他塾より有利に働くのだろう。

裏を返せば、サピックスの教材はレベルの高い子供のためのものであるともいえよう。解説も他社と比べれば決して丁寧ではない。力のない者がサピックスで勉強するのは、教材自体からしてまず厳しいかもしれない。
教材を見る機会があったら、自分がこの問題で対応できるかどうか、確認してみるのもよいだろう。

ところで、ここで入試に直結する話をさせてもらおうと思う。

塾によって各々編集する問題が違うため、ある塾ではよくやっている問題が別の塾ではあまりやっていない、ということがよくあるということだ。
例えば日能研で繰り返しよくやる問題パターンが、実はサピックスではあまりやっていなかったり、その逆であったりという現象が意外にあるのである。
このため同じ分野であっても、どこの塾に行っているかによって、得意になる問題パターンが異なってくる。
中学入試というのは、寡占化されているため塾による団体戦という側面がどうしても生じてしまう。
これは受験生にとって意外な盲点だろうが、算数の配点は大きいだけに結構結果には効いてくる。
たまたまその年に出題された問題が、自分の塾でよくやってきた問題であれば有利に働くだろうし、他塾が得意で自分が落とした場合はかなり響くはずだ。

私はこの点を大分前から見抜いていた。
だから指導に当たる際、例えば日能研生には、日能研以外の塾ではよくやっている問題を指摘したりすることがある。サピックスの生徒についてもしかりである。

その塾でそこそこ成績を取っていても、偏差値はときに裏切ることがある。受験はなるべく運の要素を排除したい。それが私の指導方針の一つである。